数回にわたってSCILABを用いて周波数応答関数の計算をしてきました。
今回は中締めとして、地盤を基盤と堆積層の二層にモデル化したとき、堆積層の状況しだいで周波数応答がどのように変化するかを見てみます。
既定値として、堆積層は単位体積重量1.5tf/m3、S波速度100m/s、マクスウェル型の減数係数α=2、履歴型の減衰係数β=2%で層厚5mとします。
また基盤は、単位体積重量2.0tf/m3、S波速度300m/s、マクスウェル型の減数係数α=2、履歴型の減衰係数β=2%とします。
減衰係数の違いによる増幅スペクトルの変化
減衰係数のうち、履歴型材料減衰係数(土の減衰)βを変化させたときの増幅スペクトルの比較です。
極大値をとる周波数は5Hzと15Hzです。これは、どの場合も変わりません。一方、βが大きくなるにつれて、その極大値は小さくなっています。
ちなみに堆積層のS波速度100m/sを5Hzで割ると20mです。これが周波数5Hzの正弦波の波長となります。堆積層の層厚は5mですから、堆積層の4倍の長さの波長が最も増幅され易いということです。
同様に15Hzに相当する波長は6.66mで、堆積層の4/3倍の長さの波長が次に大きく増幅されているということになります。
堆積層の層厚の違いによる増幅スペクトルの変化
次に、堆積層の層厚を変化させたときの増幅スペクトルの比較です。
極大値をとる周波数は、層厚を変えると変化しています。その値は、先述した波長と層厚の関係と調和的な結果となっているはずです。
気になるのは、その極大値です。層厚が薄い方が増幅率は大きくなっています。これは同程度の揺れが基盤に到来すれば、堆積層が薄いほど地表面の揺れは大きく増幅されることを意味します。計算する前に思っていたのと違っており、少し意外な結果でした。
基盤の速度の違いによる増幅スペクトルの変化
速度が400,300,200m/sの時の描画を忘れてしまった、というわけではありません。全て重なってしまったのです。
速度が異なればせん断弾性係数Gも異なります。複素剛性G*も、伝播定数Pも異なる値となります。結果としてインピーダンス比Rも各速度で異なる値をとります。
念のために上昇波を表現する積分定数A(2)と下降波を表現する積分定数B(2)を、それぞれのV2に対して表示させてみましたが、全て違う値でした。
にも関わらず、A(2)+B(2)を計算すると全て同じ値となるのです。A(1)+B(1)が同じ値となるのは自明ですから、結果として基盤の速度をいくら変えても周波数応答関数は同じ値となるようです。増幅は基盤より上位の層内で生じる現象なので、基盤の物性には無関係ということなのでしょうか?興味深い計算結果となりました。