Evacuateでいいの?

 2022年1月15日13時10分(日本時間)ごろ、南太平洋のトンガで大規模な火山噴火が発生しました。気象庁は一旦「津波の心配ない」と発表したものの、深夜になって改めて津波注意報・警報を発令するといった異例の対応となりました。その理由として「潮位変化の正確な原因は分かっていないがトンガと日本の間の観測点で津波が観測されていないにもかかわらず、日本周辺で大きな潮位変化が観測されたため津波警報の仕組みを使って防災対応を呼びかけることにした」という説明となっています。

 しかし、トンガ-日本間のフィジーの海岸では津波の映像が撮影されています。また、噴火直後の気象衛星からの画像も再三再四報道されていますが、あの動画から「セカンドインパクト」を想起した人も多かったことでしょう。日本時間の夜半に至るまで津波が観測されていなかったという気象庁の説明は、やや不可解と言わざるを得ません。

 さて、その津波警報・注意報を受けての対応ですが、避難を促す英語は evacuate を使用しているようです。確かにgoogle翻訳に「避難」と入力すると「evacuation」が出てきます。しかし、これは軍隊の撤兵や、予定された空襲を避けて都会から郊外に移動するなどの行為を意味するように思います。

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 災害からの避難には、いくつかの形態が有ります。例えば大規模な地震災害では、発災から数か月にわたって「収容施設に立て籠もる(sheltering)」のが避難です。バタバタと急ぎ移動するような避難とはまた違うような気がします。一方、突然の河川氾濫の場合では、状況にもよりますが「安全な場所に留まる(stay)」ことが避難と成り得る場合もあるでしょう。

 これとは違い火事や津波の場合は、どこにでもいいから、とにかく今とは違う場所に「大急ぎで逃走する」必要が有ります。この英訳はむしろ run away や escape の方が適切なのではないでしょうか?いずれにせよ、行き先がはっきりしている evacuate はそぐわない様な気がしました。もっとも粗末な災害対応しかできないこの国から evacuate して帰国することを勧奨しているつもりなら、極めて適切な英訳なのかも知れませんが...。